A 総論
・脳障害により,主に覚醒や認知機能が侵される病態(広義の意識障害)を重症脳障害として扱う
・意識障害には3つの要素が含まれる
■意識レベルの低下,■意識内容の異常,■意識の狭窄
1 意識レベルの低下
・救急医療では,意識障害の要素のなかで意識レベルの低下がもっとも重視
・JCSやGCSでも,意識レベルを開眼の状態で評価する
2 意識内容の異常
・開眼していても,自分と自分の周囲の状況を把握できていなければ,意識内容に問題がある
■ただし知能障害や精神疾患では,覚醒状態でありながら意識内容に異常を認めることがある
3 意識の狭窄
・意識レベルは侵されないが,注意の向かう範囲や対象が限られ,状況の正しい判断ができないことを示す
・意識の狭窄を生じていた期間中の記憶は障害されていることが多い
B 発症機序
・意識
■脳幹の上行性網様体賦活系からの刺激が間脳を介して大脳半球全体に投射されることによって維持される
・意識障害は解剖学的に,脳幹の障害または大脳半球の広範な障害のいずれかで出現する
1 脳血流の障害
・意識の維持には十分な脳血流量が不可欠である
・脳は代謝の活発な臓器であり,神経細胞が大量の酸素とブドウ糖を消費
・脈拍が減少し,脳全体の血流量が減少して短時間の意識障害が生じた場合,失神と呼ばれる(アダムス・ストークス症候群)
・頭蓋内圧亢進による脳全体の血流低下も意識障害の原因となる
2 脳代謝・神経伝達の障害
・神経細胞が利用できるのはブドウ糖のみ
・急激に血糖値が低下すると,神経細胞はエネルギー源を断たれて活動が不十分となり,程度によっては意識障害をきたす
■50mg/dL程度になると中枢神経症状が出現し,皮膚の冷汗や手指振戦をみる
■30mg/dL未満で意識障害が明らかになると考えてよい
・低酸素血症,体温異常,肝不全,薬物,血清電解質異常なども,脳細胞の代謝や神経伝達の障害を通じて意識障害を呈する
3 脳幹の障害
・外傷,出血,梗塞などで脳幹網様体が破壊または圧迫されて,意識障害が生じることが多い
・脳ヘルニアでは,押し出された脳組織によって脳幹が圧迫される
C 一次性脳病変と二次性脳病変
1 一次性脳病変
・脳に原因となる器質的病変があって意識障害を発症するもの
・病変の種類
■脳血管障害,感染症,腫瘍,外傷など