中毒各論②(EFGH) P802~807

中毒各論 P796

E アルコール中毒

・エタノールは食用酒の主成分

アルコール中毒とはエタノール中毒をさすことが多い

・内服では,胃および小腸上部から吸収され,肝臓のアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに代謝される

・アセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素によって酢酸に代謝される

1 エタノール

①単純酩酊

単純酩酊
エタノール血中濃度に応じた生理的変化

血中エタノール濃度

■100mg/dL 以下
全身の熱感,味覚・嗅覚鈍麻,顔面紅潮,多幸感など。いわゆる「ほろ酔い」状態。
このほろ酔い状態でも呼気中エタノール濃度は0.15mg/Lを超えるため,自動車を運転した場合は酒気帯び運転として処罰の対象
■100〜250mg/dL
判断力が低下,歩行障害などの小脳失調,いわゆる「千鳥足」状態
250〜350mg/dL
意識が混濁して歩行不能,嘔吐による誤嚥や窒息のリスクが高まる
350mg/dL以上
昏睡,呼吸抑制,体温低下,泥酔状態,死亡の危険が高まる

単純酩酊の症状

出典:へるす出版 改訂第10版 救急救命士標準テキスト


②急性中毒とその対応

急性中毒
■視床下部の体温中枢障害によって生じる偶発性低体温症が最重症の目安となる
■抗利尿ホルモン分泌抑制作用による→多尿脱水
■血管拡張作用による→低血圧
■肝臓の糖新生抑制作用による→低血糖乳酸アシドーシスをなどを生じる

・搬送時は酸素投与および気道・呼吸管理を行い,嘔吐による窒息誤嚥を防止

2 メタノール

・メタノール(メチルアルコール)は,燃料アルコールや有機溶剤,塗料,染料,洗剤,化粧品に使用されている

・生体内へ吸収されたメタノールは,肝臓の酵素によってホルムアルデヒドに代謝
■ホルムアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素によってギ酸に代謝される

・経口,吸入,経皮のいずれの場合も生体内へ速やかに吸収される

・経口摂取による急性中毒
■まず酩酊
その後6〜24時間無症状
■その後、ギ酸の蓄積に伴って代謝性アシドーシスと過呼吸,悪心・嘔吐や腹痛などの消化器症状,複視・視野狭窄を含む視力障害
頭痛,痙攣,昏睡などの中枢神経障害を生じる。視神経障害は不可逆的な障害を残す場合がある
代謝性アシドーシスの程度とメタノール中毒の予後はよく相関する

3 その他のアルコール

①イソプロパノール

イソプロパノール(イソプロピルアルコール)は,医療用消毒剤,オーディオヘッドクリーナー,芳香剤,しみ抜き剤などに含まれている

・経口,吸入,経皮のいずれの場合も生体内へ速やかに吸収される

・生体内へ吸収されたイソプロパノールは肝臓のアルコール脱水素酵素によってアセトンに代謝される

・急性中毒傷病者の呼気はアセトン臭(ケトン臭)がする