A 定義・概念
■心拍動の不快な自覚
■心臓が強く打つ感覚(心悸亢進),心臓が速く打つ感覚,脈が飛ぶ感覚など
■ドキドキする
■心臓がピクピクする
■脈が大きくなったり小さくなったりする
■ドキンとする
■脈が飛ぶ、詰まる、抜ける
■胸やのどの奥が詰まるなど
B 発症機序
・機序はよくわかっていない
■心拍数の増加,心拍数の変動,心収縮力や1回拍出量の増加,心因性など
C 原因疾患
動悸の原因別にみた分類と代表的な疾患
出典:へるす出版 改訂第10版 救急救命士標準テキスト
・動悸を主訴として救急搬送される傷病者では心疾患,とくに不整脈が多い
1 不整脈
不整脈
・正常洞調律以外の調律の異常と心拍数の異常のすべて
・脈の間隔が整であっても徐脈や頻脈であれば不整脈
■上室頻拍,心房細動,心房粗動,心室頻拍
■房室ブロック,洞不全症候群
・動悸が突然はじまり,数分で突然消失するのは,上室性または心室性の頻拍発作の特徴
2 器質的心疾患
■虚血性心疾患,心不全,高血圧性心疾患,心臓弁膜症,心筋症,心筋炎,シャントを伴う先天性心疾患
・心収縮力や1回拍出量の増加,不整脈の合併などによって動悸を生じる
・急性心筋梗塞で胸痛ではなく動悸が主訴となることがある
3 全身的原因
・貧血,発熱,呼吸系疾患(低酸素血),低血糖,甲状機能の亢進症または低下症など
・心拍数の増加または減少,心収縮力の増強,不整脈のいずれかによる
4 その他
・薬剤性,嗜好品,心因性により動悸が出現することもある
D 随伴症候
1 失神・めまい
・動悸と失神または失神性めまいの合併
■高度の頻脈または徐脈など心拍出量の著しい低下を示す可能性があり,注意が必要
2 頭痛
3 発熱
・発熱は動悸の原因となる
■体温が1℃上昇するごとに心拍数は6~10/分程度増加する。ただし,高度の頻脈は発熱だけでは説明しにくい
■まれではあるが,心筋炎や甲状腺クリーゼのような重大な疾患がある
4 振戦
■低血糖,甲状腺機能亢進症,薬剤(気管支拡張薬など),カフェインの摂取など
E 緊急度・重症度の判断
1 随伴症候
緊急度が高い
・とくにショック徴候を認める場合
重症
・激しい胸痛
2 心電図所見または原因疾患
・心拍数が150/分以上または40/分以下,意識と血圧が保たれていても迅速に搬送する
緊急度が高い
・心室細動に移行しやすい危険な不整脈(心室期外収縮・心室頻拍)
緊急度・重症度ともに高い
・肺水腫に対する心不全
F 現場活動
1 観察
・バイタルサインでは脈の性状(間隔の不整,強弱の不整など)を注意深く観察
・聴診でラ音と心雑音の有無を確認
・継続的な観察のためにはP波のみやすい近似Ⅱ誘導が適しているが,胸痛があるときには誘導を切り替えて観察する
2 処置
・状態に応じて酸素を投与
・低酸素血症は不整脈を増悪させる
■仰臥位を基本
■呼吸障害のある場合は、起坐位を選択
■心室期外収縮,高度の徐脈・頻脈に対しては除細動パッドを装着し、心室細動や無脈性心室頻拍の出現に備える
・意識障害の出現を早期に発見するため、激励の声をかけながら搬送
3 医療機関選定
・重症度が高い場合
■循環器救急病院や救命救急センターなどの高次救急医療機関
・動悸のみで,全身状態や心電図に異常が認められない場合
■最寄りの内科救急病院に搬送