A 総論
1 加齢による変変化
①加齢による身体機能上の変化
・体内の水分量,とくに細胞内液量が減少
・体脂肪の割合は増加するが,体重から体脂肪量を引いた除脂肪体重は年齢とともに減少
神経系
・脳の萎縮や,ドパミンなどの神経伝達物質の合成低下
・疼痛閾値が上昇するために疼痛の訴えが軽いことがある
・体温調節機能の低下から感染時に体温が上昇しにくく,環境温度への適応能力の低下から熱中症や偶発性低体温症にかかりやすくなる
・皮膚組織は全体的に萎縮して薄く,しわが目立つようになり,頭髪のメラニン色素産生が低下すると白髪になる
・汗腺機能の低下は暑い時期の体温調節に支障をきたしやすい
・脂腺機能の低下は皮膚の乾燥をもたらす
感覚系
・眼の調節機能の低下から老視(老眼)をきたし,水晶体の不透明化から白内障になる
・難聴は高音域からはじまり,高音域がカットされた音声は明瞭度が低下し,会話が聞き取りにくくなる
・温痛覚,触覚,味覚などあらゆる感覚が低下
循環系
・ストレス時の心拍増加や心筋の収縮力増加の反応が鈍くなり,心不全に陥りやすくなる
・動脈壁の弾性が低下するために収縮期血圧は上昇
呼吸系
・肋軟骨の骨化や肺の弾力性の低下から胸郭・肺コンプライアンスが低下し,呼吸筋の筋力低下と相まって,肺活量の減少,1秒率の減少がみられる
・動脈血酸素分圧(PaO2)は低下し,咳嗽反射の低下や気管の線毛細胞の機能低下がみられる
消化系
・齲蝕(虫歯)や歯周病により歯の数が減少し,唾液分泌機能の低下,咀嚼機能の低下,嚥下機能の低下がみられる
・消化管内容物の通過時間が長くなり,便秘傾向となる
泌尿・生殖系
・加齢とともに腎血流量の低下と糸球体濾過量の低下
・高齢者では薬剤の代謝が遅延
・男性の場合は加齢とともに前立腺が肥大
・女性の場合は閉経