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運動麻痺 P503(無料公開)

救急症候学

A 定義・概念

・骨格筋の収縮は,大脳皮質からの神経性興奮が骨格筋まで伝わって行われる

B 発症機序

・随意運動を伝える経路
■大脳皮質運動野にはじまり,内包後脚,脳幹,脊髄,神経根,末梢神経,神経筋接合部,骨格筋に至る
■これらのどこが障害されても運動麻痺が起こる


出典:ゴロー/イラストで学ぶ体の仕組み

C 分類

1 程度による分類

・完全麻痺
■筋力が完全に失われたもの

・不全麻痺
■低下しているが残っているもの

2 分布による分類

単麻痺

・四肢のうち1肢だけの運動麻痺


片麻痺

・右半身または左半身だけの麻痺
・大脳皮質、大脳白質、大脳半球の障害によるものが多い
■病変反側の上下肢に加えて,同じく病変反対側の顔面にも麻痺が出る

対麻痺

・両下肢の麻痺
・胸髄または腰髄の障害

四肢麻痺

・四肢すべてに麻痺が及ぶ場合


交叉性片麻痺

・一側の脳神経麻痺と,反対側上下肢の運動麻痺の合併

運動麻痺の分布による分類

出典:へるす出版 改訂第10版 救急救命士標準テキスト

とくに「交叉片麻痺」について問わることが多いわよ

D 原因疾患

・中枢神経系の障害,末梢神経系や筋の障害,全身性の病態に分類

運動麻痺の原因疾患

出典:へるす出版 改訂第10版 救急救命士標準テキスト

各疾患の特徴をおさえといてね

・慢性疾患で救急搬送対象
■神経筋疾患(筋萎縮性側索硬硬化症)
■筋ジストロフィー
■重症筋無力症
■周期性四肢麻痺
・自然毒中毒
■フグ毒,ボツリヌスなども麻痺をきたす
・代謝性疾患で重要なのは「血糖値の異常」
■低血糖傷病者→2%に片麻痺がみられる
■高血糖昏睡でも片麻痺をきたすことがある

E 随伴症候

1 感覚障害

・運動神経の線維と感覚神経の線維は,近くを並んで走るところが多い

・運動麻痺の範囲にほぼ一致した部位の感覚障害を生じることが多い

・感覚障害の内容
■痛覚・触覚・深部感覚など体性感覚の低下(感覚鈍麻),消失(感覚脱失),過敏,異常な感覚(いわゆる“しびれ”)など

2 意識障害

・傷病者は運動麻痺を訴えないので積極的な観察によって麻痺の存在をみつけ出す必要がある

3 眼と瞳孔の異常

・鉤回ヘルニア
■片麻痺,反対側の瞳孔散大
・橋出血
■四肢麻痺,両側高度縮瞳
・有機リン中毒
■両側高度縮瞳,呼吸不全,気道分泌物の増加,繊維束性収縮
・腕神経叢損傷
■上位の単麻痺,ホルネル症候群による中等度の縮瞳

4 その他の神経学的異常

・脳血管障害
■急性の運動麻痺
■構音障害
■失語(※運動性の失語は、右片麻痺を伴うことが多い)

5 バイタルサインの異常

・脳血管障害
■血圧上昇を伴うことが多い

・中部胸髄より上位の頸髄損傷
■血圧低下,徐脈
・上部頸髄損傷
■四肢麻痺,呼吸停止

F 判別を要する病態

1 運動失調

・原因
■小脳,前庭迷路系,骨髄後索のいずれかが障害されたとき

・症状
■ぎこちなく不正確
■起立・歩行時のふらつき、書字やコップ保持の困難
■構音障害などを認める

2 疼痛による運動制限

・骨折などにより体動で強い痛みが生じるとき,傷病者は体動を避けようとする

G 緊急度・重症度

1 性状からの判断

重症度高い

・急激に出現した片麻痺,対麻痺,四肢麻痺


緊急度高い

・麻痺が呼吸筋に及んでいる場合

2 随伴症候からの判断

緊急度・重症度高い

・意識障害,瞳孔異常,ショックまたは呼吸障害


緊急度高い

・脳ヘルニア徴候認めた場合
■進行する意識障害,片麻痺,瞳孔不同など

重症の可能性が高い

・嘔吐,頭痛

3 原因疾患からの判断

緊急度・重症度高い

・脳血管障害,頭部外傷,脊髄の障害


緊急度が高い

・局所の血行障害
■四肢の急性阻血・コンパートメント症候群

H 現場活動

1 観察

・意識レベルとバイタルサインのほか,麻痺の分布と程度(完全麻痺か不全麻痺)の観察が重要

・運動麻痺と同じ部位に感覚障害がないか確認

・意識障害があるときは眼位と瞳孔も観察

2 処置

・呼吸筋麻痺による低換気
■補助換気

・静脈路確保を行う場合
■運動麻痺の部位を避けるのが原則

3 医療機関選定

・非外傷性に片麻痺が急激に出現した場合
■脳卒中の診療が可能な医療機関
・対麻痺または四肢麻痺が急激に出現した場合
■脊椎・脊髄疾患の診療科
(医療機関によって脳神経外科または整形外科)

・呼吸麻痺
■集中治療の可能な医療機関

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