・化学損傷
■体表面の皮膚・粘膜が,化学物質(酸,アルカリ,金属,毒ガスなど)に曝露されて生じる損傷
■特徴として
①化学物質の種類によって損傷の性状が異なる
②化学反応の進行とともに損傷も進行する
③体表面の化学物質を除去しても,皮膚・粘膜内部へ浸透した化学物質によって損傷が継続する
④初期には化学損傷の最終的な深度を評価できない
⑤生体内へ吸収された化学物質によって,肝・腎機能障害や中枢神経障害などの臓器障害を生じる場合がある
・腐食
■化学物質が皮膚・粘膜を強く刺激したり,重度の損傷を起こしたりすること
・腐食を起こす親水性化学物質
■強酸
■強アルカリ
■その他腐食を起こすもの
弱酸(フッ化水素酸など),脂溶性(水に溶けにくく,油に溶けやすい),化学物質(腐食性芳香族化合物や脂肪族化合物など),金属など
・化学損傷が起こる要因
■化学物質を扱う事業所において労災事故として発生する場合が多い
■学校,研究施設,家庭内でも発生する
■自殺企図で化学物質を使用する場合もある
・日本でおける症例報告
■酸(フッ化水素酸,塩酸,硫酸,硝酸,酢酸)
■アルカリ(水酸化ナトリウム)が多い
化学損傷の原因となる化学物質
出典:へるす出版 改訂第10版 救急救命士標準テキスト
A 各種の化学損傷
1 酸
酸の種類
・塩酸,硫酸,硝酸,フッ化水素酸,酢酸
強酸
・トイレ用洗剤,パイプクリーナー,錆さび取り剤
特徴
・吸入,誤嚥による化学性肺炎は致死的となる
病変部分
・塩酸
■灰白色から黄褐色
・硫酸
■黒色
・硝酸
■黄褐色
フッ化水素酸
・皮膚および粘膜から生体内へ速やかに吸収
・骨や血中のカルシウムと結合
・低カルシウム血症を生じる
・吸収部位の急激な腐食作用による激しい痛み
・時に致死的な循環・呼吸不全をきたす
シュウ酸
・代謝性アシドーシス,過呼吸,頻脈,心不全やショック,低カルシウム血症
2 アルカリ
アルカリの種類
・水酸化ナトリウム(苛性ソーダ),水酸化カリウム(苛性カリ),水酸化カルシウム
強アルカリ製品
・漂白剤,換気扇用洗剤,カビ取り剤,パイプクリーナー,セメントを原料に含むコンクリート