A 人体の作りとその役割
1 細胞
①細胞とは
・人体は数十兆個の細胞で構成
・大きさは10㎛、光学顕微鏡でみることができる
■卵子細胞 直径200㎛
■骨格筋細胞 最大で長さ約30cm幅100㎛
・ヒトの細胞はウイルスや細菌より大きく,蛋白質の分子よりもはるかに大きい
・細胞は,球形,円柱形,星形,紡錘形など,その機能に応じてさまざまな形をしている
②細胞の構造
・ヒトの細胞は,赤血球などの例外を除き,すべて核をもつ
・細胞の内部で核以外の部分は細胞質と呼ばれ,電解質,蛋白質などの溶け込んだ半透明の液体で満たされる
・細胞小器官
■細胞質内で特有の働きをもつ,ごく小さな構造物
③細胞膜
・細胞への物質の出入りを制御
・細胞から情報を受取る ・酸素,二酸化炭素,水,脂溶性分子などは細胞膜を通過しやすい
・濃度の高いほうから低いほうに向かって,エネルギーを使わずに移動する
・ナトリウム,ブドウ糖などある程度よりも大きな水溶性分子は細胞膜を通過しにくい
・細胞膜の絶え間ない活動のおかげで細胞内の環境が保たれている
・安静時にはエネルギーの30〜40%がこのような細胞内の環境維持に使われる
④核
・横紋筋細胞などは複数の核がある
・遺伝情報を保管し細胞の活動を制御
・核には染色体があり大量のデオキシリボ核酸(DNA)が含まれる
・DNAの遺伝情報はリボ核酸(RNA)に転写された後に蛋白質として翻訳
・核小体
■RNAと蛋白質の集まり、リボソームを組み立てる
⑤細胞小胞官
・ミトコンドリア
■アデノシン三リン酸(ATP)の主な合成を行う
・リボソーム
■蛋白質の合成
・リソソーム
■細胞内に取り込まれた栄養,細胞片,微生物や老化した細胞小器官を消化
・粗面小胞体
■表面には多数のリボソームが付着して蛋白質を合成
・滑面小胞体
■脂質代謝や解毒に関与
・ゴルゾ装置
■小胞体の産生物を加工して細胞内外に送り出す
・中心小体
■細胞分裂の際に重要な働きをする
出典:ゴロ−@解剖生理イラスト
2 組織
■同じ形と機能をもつ細胞が多数集合したもの
■上皮組織,支持組織,筋組織,神経組織の4種類に大別
①上皮組織
・上皮組織は損傷を受けても再生しやすい
②支持組織
・血液や細胞外の間質も支持組織
・結合組織
■支持組織から骨と軟骨を除いたもの
③筋組織
筋組織
■身体を動かす
■意志で動かすことのできる随意筋
■心臓を動かす
■不随意筋
■臓器や血管の壁を構成
■不随意筋
骨格筋
・横紋構造をもつ横紋筋で形成
■筋周膜に包まれた筋線維
(集合した筋束→筋膜に包まれ1つの筋肉を形成)
・意識的に支配できる=随意筋
・骨格筋→紡錘形
・感情表現に役割を果たしている(怒り,悲しみ,喜びなど)
■同じ作用をもつ筋肉
・拮抗筋
■反対の作用をもつ筋肉
・下肢は伸筋群が強い
平滑筋
・横紋をもたず、筋束の境界も不明瞭
・意識的に支配することができない
・不随筋
■内臓筋ともいわれている
■交感神経
■副交感神経
■ショック状態の傷病者:交感神経刺激により四肢の血管平滑筋が収縮し,四肢末梢の冷感が出現
④神経組織
・神経膠細胞(グリア細胞)が大量に含まれる
・損傷を受けた場合
■元どおりに再生しにくい
3 器官
・器官
■複数の組織が組み合わさり,まとまった構造と機能を有するもの
・一般的に「内臓」は「臓器」とほぼ同じ意味
B 体液
1 体液の組成
①体液の内訳
・人体の大半は水の存在下に活動を行っている
体重に占める水の割合
■約75%
・成人男子
■約60%
・成人女子
■約55%
・身体中の水分は細胞内の水分(細胞内液)と、細胞外の水分(細胞外液)に分けられそれぞれ体重の約40%と約20%を占める
・細胞外液
■血漿と間質液に分けられ,それぞれの量は体重の約5%と約15%に相当
体液の内訳(成人男子の体重に対する割合
出典:へるす出版 改訂第10版 救急救命士標準テキスト
■例えば出血で血漿量が減れば,まず間質液の一部が血管内に移動して血漿量を回復させ,さらに細胞内液の一部が間質に移動して間質液の不足を補う
②体液の成分
・体液
■ナトリウムイオン,カリウムイオン,カルシウムイオンなどの電解質,蛋白質,各種栄養素,ホルモン,酸素,二酸化炭素などが水に溶け込んだ混合物
■成分は細胞内液と細胞外液で大きく異なる
体液(細胞外液と細胞内液)の比較
出典:ゴロ−@解剖生理イラスト
2 細胞外液
①血漿
・血液の量
■体重の約8%
・血液
■血球:約45%
■血漿:約55%
出典:ゴロ−@解剖生理イラスト
・血漿
■血液から血球成分,すなわち赤血球,白血球,血小板を除いたもの
・血清
■血漿からフィブリノゲンなどの凝固因子の大部分が除かれたもの
②間質液
・間質液は「組織液」ともいう
・血管外で細胞と細胞の間にある液体
間質液
出典:ゴロ−@解剖生理イラスト
③血液と細胞間の物質交換
・細胞は「間質液」を介して血液と物資交換を行う
・蛋白質以外の血漿成分は,毛細血管の壁を通り抜けて間質液ときわめて活発に物質を交換している
・酸素や栄養素などの分子は間質液の中でも速く動くことができる
3 細胞内液
細胞内液に多い
・マグネシウムイオン
・細胞内外での物質の移動は、細胞膜による制限を受ける
4 電解質
・電解質
■水に溶けて分子が分かれてイオンを生じるもの
■ナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウムなどの金属の塩,炭酸,リン酸などの無機酸などが含まれる
出典:ゴロ−@解剖生理イラスト
5 酸塩基平衡
①酸塩基平衡とは
・酸塩基平衡
■体液における酸と塩基のバランス
■pH7.35~7.45
■弱アルカリ性
・間質液と静脈血
■動脈血よりやや低値
・細胞内液
■pH6.0~7.4前後
・体液
■代謝の結果,酸が産生されるため常に酸性に傾きがち
②酸塩基平衡維持の仕組み
・体液のph
■ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式で規定される
・重要
■炭酸水素イオン濃度の低下ないし二酸化炭素分圧の上昇は,pHを下げる
(体液を酸性に傾ける)
■炭酸水素イオン濃度の低下
■二酸化炭素分圧の上昇
6 浸透圧
①浸透圧
・半透膜
■ある物質は通すが別の物質は通さない性質をもつ膜
浸透圧
出典:ゴロ−@解剖生理イラスト
②体液と浸透圧
・細胞内液と細胞外液の電解質組成は大きく異なるが、粒子数の総和である浸透圧は等しい
・血漿にはより多くの蛋白質が存在するぶんだけ浸透圧が少し高い
・膠質浸透圧
■血管壁を半透膜と見立てて血管内の蛋白質によって生じる浸透圧
■膠質浸透圧のほとんどは,「アルブミン」によって生み出される
■水は浸透圧低いほうから高いほうに移動するので,膠質浸透圧は水分を血管内に引きとめておくために重要
■生理食塩液
■乳酸リンゲル液
■5%糖液
7 電解質と体液調整メカニズム
・体液の量や電解質濃度,あるいはその浸透圧は,一定の狭い範囲に自動的に保たれるように調節されている
■自律神経系や視床下部,あるいは,下垂体や副腎・甲状腺などの内分泌器官などから分泌される各種のホルモン,さらには腎臓の機能が関与