A 疫学
■顔面の外傷は約14%
■頸部の外傷は約1%
■約10%は頸椎損傷を合併
・原因
■交通事故,墜落,スポーツ中の事故,暴力事件などが多い
B 特徴
1 気道確保
・重症の顔面・頸部外傷
■下顎骨折などに伴う舌根沈下
■気道を構成する軟部組織の腫脹
■異物(出血や吐物,骨折片,歯牙など)によって気道が脅かされることが多い
2 出血
・顔面は頭皮と同様,血流の豊富な組織
・顔面外傷に伴う上気道からの出血
■血腫や凝血塊による気道閉塞につながる
・口腔・咽頭に流れた血液を傷病者が無意識に嚥下し,胃に貯留した血液を嘔吐・誤嚥することもある
・坐位・立位の傷病者
■外頸静脈や内頸静脈の損傷部位から空気が流入して空気塞栓をきたすことがある
3 機能障害
・顔面には視覚や聴覚,嗅覚などの特殊感覚受容器がある
■外傷に伴ってこれらの機能が損傷されると,傷病者の機能的予後(生活の質)は著しく障害される
■内耳機能の障害によって永続的な聴覚障害が生じることがある
・眼球や外眼筋,視神経,動眼神経などの損傷に伴って視機能が障害されれば,傷病者の機能予後に重大な影響を与える
・顔面の側面の裂創や切創
■顔面神経や耳下腺管の損傷をきたす
■開口障害や咬合(上下の歯の咬み合わせ)障害の原因となる
4 整容的な問題
・顔面は整容面でもっとも重視される部位
・生命予後や機能予後に問題がないような軽症の外傷でも,形成外科的に慎重な対応が必要
C 主な外傷
1 上顎骨(中部顔面骨)骨折
・上顎骨は顔の中央部分にある左右1対の骨
参考資料:https://ja.wikipedia.org/wiki/
・構成
■眼窩の内下側や上顎歯槽,硬口蓋,鼻腔側壁
・比較的強固な骨で,その骨折は強い外力が働いたことを意味する
■鼻腔閉塞,眼球運動障害,髄液漏などをきたすことがある
・重症頭部外傷や頸椎損傷を合併することもある
・内部構造の変形,腫脹,出血により容易に気道が脅かされ生命の危険を生じる
2 下顎骨折
・顔面骨の骨折のなかでは鼻骨骨折に次いで多い
・好発部位
■下顎結合部,下顎体部,下顎角部,下顎頸部,40%に2カ所以上の骨折をきたす
・咬合不全や咬合時の痛み,骨折部からの出血などを伴う
・歯牙の脱臼を伴う場合
■脱臼歯牙の取り扱いに注意