喀血 P516(無料公開)

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A 定義・概念

・喀血
■主に下気道からの出血を咳とともに喀出すること

・血痰
■痰に血がからむ程度のもの

B 分類

・少量
■ティッシュに付着したり痰にからんだりする程度

・中等量
■明らかな血液の喀出

・大量
■呼吸に明らかな障害が出る量

C 喀血による影響

1 呼吸への影響

・気道内出血が肺組織に流入すると,血液で満たされた肺胞が換気されず,肺内シャントが増加して低酸素血症をきたす

・両側の肺に大量の肺内シャントを生じて致死的な低酸素血症を生じ

・喀血では肺に基礎疾患があることが多い
■呼吸の予備能は低いことが多いので,比較的少量の喀血でも呼吸不全に陥るおそれがある

2 循環への影響

・まれに,大量の喀血により循環血液量減少性ショックをきたすことがある

D 原因疾患

喀血の原因疾患


出典:へるす出版 改訂第10版 救急救命士標準テキスト

1 呼吸系疾患

・大量喀血となる血管
■気管支動脈(気管支動脈は体循環の一部であり,圧が高いので大量出血をきたしやすい)
■肺動脈の枝からの出血であることが多い
・大量喀血の原因で頻度が高いのもの
■気管支拡張症
■陳旧性肺結核(排菌がみられない肺結核)

・血痰で頻度が高いもの
■急性気管支炎

・肺癌
■まれに太い血管に浸潤して致死的な大量喀血を起こす

・肺梗塞による喀血は少量のことが多い

2 循環系疾患

・僧帽弁狭窄症
■肺静脈圧上昇,肺毛細血管圧上昇により血管が破綻する


出典:一般のみなさまへ各疾患のご案内

3 全身性疾患

・抗凝固薬の過量投与

・血小板減少症,白血病,血友病など種々の疾患で出血傾向がある場合,呼吸系に明らかな病変がなくても喀血をきたすことがある

4 外因性疾患

・気道異物による出血
■少量

・外傷
■大量の気道内出血で呼吸不全に陥ることがある

E 判別を要する病態

1 吐血

・消化管からの出血を嘔吐したもの

2 鼻出血

・鼻粘膜の血管が破綻して出血したもの

喀血と類似した病態の判別


出典:へるす出版 改訂第10版 救急救命士標準テキスト

F 緊急度・重症度の判断

1 呼吸状態

・喀血の場合,通常は循環よりも呼吸への影響が大きい

・緊急度・重症度高い
■強い呼吸困難,窒息,チアノーゼ,意識障害,バイタルサインの著しい異常,SPO2値の著しい低下

2 喀血の程度

緊急度・重症度高い

・大量喀血
・呼吸不全やショックを生じる喀血例の死亡率は80%

重症度高い

・肺癌、肺梗塞の既往

G 現場活動

肺結核による喀血の場合が少なくないため,感染予防にはとくに留意

1 観察

・気道の開通の確認が最優先

・胸部の聴診も必須

・止血に影響を与える抗凝固薬や抗血小板薬について,服用の有無を確認

2 処置

・大量喀血時
■窒息の防止と健側肺への血液流入防止が重要である


①気道確保

・血液や凝血塊が気道を閉塞するおそれがあるときは,咳を促すか吸引することにより除去を試みる


②酸素投与

・全例に投与する


③体位

・状態が安定しているとき
■傷病者の好む体位で安静を保つ

・大量かつ持続的に喀血しているとき
■患側を下にした側臥位をとらせて窒息を防ぐとともに,健側肺への血液流入を最小限にする

・大量喀血で左右の肺のどちらから出血しているかが不明のとき
■半坐位(ファウラー位)

3 医療機関選定

・血痰程度で呼吸・循環状態が安定している場合
■かかりつけ医への搬送

・全身状態が不安定または大量の喀血
■緊急CT検査,気管支動脈塞栓術をはじめとする各種止血処置,および重症患者管理が可能な高次救急医療機関

・結核の場合
■専門治療よりも救命を優先