A 総論
1 分類
①精神障害の原因からの分類
外因性精神障害
・身体的原因が明らかな精神障害
■老化,血管障害,外傷,炎症などによる脳の器質的損傷や機能的障害が原因で生じる
・症状性精神障害
■全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病や甲状腺疾患などの脳以外の全身疾患が原因で生じる
・中毒性精神障害
■アルコールなどの精神作用物質が原因で生じる
内因性精神障害
・原因がいまだに解明されていない精神障害
・統合失調症,双極性感情障害(躁うつ病)などに対する総称
心因性精神障害
・心理的,環境的原因から生じると考えられている精神障害
・心的外傷後ストレス障害(PTSD),適応障害,解離性(転換性)障害,境界性パーソナリティ障害など
②精神障害の症状からの分類
・国際疾病分類(ICD-10)では,「精神障害」はF0〜F10に分類されている
・内因性精神障害→F2およびF3
・心因性精神障害→F4〜F6
2 疫学
・精神障害者の数は増加
・いずれかの精神障害の生涯有病率(一生のうちに一度は病気にかかる人の割合)
■24.2%
■一生のうち4人に1人精神障害に罹患
■身体疾患患者である
■身体疾患に罹患している患者のうつ病有病率は15〜20%
3 主要症候
①せん妄
・せん妄
■軽度の意識障害に幻覚,妄想,興奮などを伴った状態のこと
・周囲の状況がわかっていなかったり,見当識障害や幻覚妄想などもみられる
・夜間に悪化することが多い
■種々の身体疾患,向精神薬の投与,入院などの突然の環境変化など
■高齢者:脱水や尿閉程度の軽微なストレスでも,せん妄に陥りやすい
・せん妄は,意識の混濁と変容
・認知症
■記憶などの認知機能の障害
・認知症患者はせん妄を呈しやすい(認知症はせん妄の危険因子である)
②精神運動興奮
・意欲が亢進し激しい行動過多がみられる状態
・交感神経緊張状態を伴う
・躁病性興奮
■統合失調症でみられる緊張病性興奮や躁状態でみられる
・パーソナリティ障害の衝動性亢進に起因するものや,精神遅滞・発達障害での不適応などによってもみられることがある
精神運動興奮を呈する代表的な精神疾患
出典:へるす出版 改訂第10版救急救命士標準テキスト
③昏迷
・意識は清明であるが,外部からの反応にまったく反応せず,何ら意志の発動がない状態
・昏迷をきたす精神疾患
■統合失調症,気分障害(躁うつ病、うつ病)などで生じる