A 総論
1 疫学と救急医療における意義
・脳血管障害は,日本人の死因で第4位
・要介護5の状態となる原因の第1位
・脳血管障害は循環系疾患とともに緊急度・重症度が高い疾患
2 神経系疾患の主要症候
①意識障害
・意識障害が突発しその程度が強いか,あるいは急激に悪化する場合は重篤であり,緊急性を要するとみなしてよい
(2)頭痛
■くも膜下出血,脳出血,脳炎,脳症,髄膜炎など,重大な頭蓋内疾患が頭痛をきたす疾患としてきわめて重要
・頭痛を訴える傷病者に,緊張型頭痛や心因性頭痛が含まれていて,これらには必ずしも緊急性を有さない
③痙攣
・全身性痙攣が持続
■原因の如何を問わず可及的速やかにこれを止める必要性があり,緊急搬送の適応
■大脳基底核,錐体外路系障害,振戦のほか舞踏運動,アテトーゼ,ジスキネジー,テタニー
④運動麻痺
・神経系の障害では麻痺という症候が特徴の一つ
・運動麻痺と感覚麻痺があるが,運動麻痺のほうがより重大
⑤感覚障害
・神経系疾患では感覚麻痺も発生するが,運動麻痺ほどその程度,部位あるいは範囲がはっきりしないことが多い
◾️皮膚の触覚,痛覚,温度覚などの障害の有無や程度を調べる
・感覚鈍麻(麻痺)のほか異常感覚,感覚過敏,感覚解離としてみられることもある
・傷病者はしばしば「しびれ」として訴えるが,しびれは運動障害をさしている場合もある
⑥構音障害
・発音(構音)にかかわる器官自体またはそれに関与する神経の障害に起因するもの
・脳血管障害ではいわゆる呂律が回らない状態
⑦複視
・問題となるのは両眼でみたときの複視(両眼複視)
■このとき他覚的には斜視が認められる
3 基本的対応
①緊急度・重症度の判断
■JCS100以上(瞳孔異常がみられるときは30以上)
■GCS8点以下
■短時間で意識レベルが急に低下する場合
②応急処置と搬送
・適切な換気と酸素化を目的とした呼吸管理
・頭蓋内圧の降下を念頭に置いた体位管理
・痙攣継続の場合
■四肢の激しい不随意運動によって外傷を受けないよう配慮
・慢性的な神経疾患の傷病者は,長期臥床や神経障害による廃用性萎縮,栄養不良,衰弱などをきたしていることがある
③医療機関選定
・突然発生した重症意識障害では救命救急センターや地域の基幹病院を選定
■脳卒中ネットワークなどを活用し適切な医療機関を選定
・緩徐に進行する慢性の神経疾患
■かかりつけ医や治療歴のある医療機関
B 脳血管障害
1 概要
・脳血管障害
■脳に血流を供給する動脈,時に静脈の異常が原因で生じる脳の病変の総称
■脳血管障害のうち急激に発症し重症化するもの
■脳梗塞が約70%
■脳出血が20〜25%
■くも膜下出血が数%
・突然発症
■脳出血,くも膜下出血,塞栓症による脳梗塞
・緩徐に発症
■アテローム血栓性脳梗塞
・症候
■頭痛,嘔吐,痙攣,意識障害などの頭蓋内圧亢進症候,髄膜刺激徴候
■顔の歪み
■上肢の麻痺
■構音障害
2 脳梗塞
①概念
・日本では,年間6万人あまりが脳梗塞で死亡する
②分類・病因
脳梗塞の種類,以下のとおり
アテローム血栓性脳梗塞
・脳梗塞全体の30%
・動脈硬化に伴うアテローム(粥腫)が関与して血管が閉塞あるいは狭窄することで発症
・メカニズム3つ
・内頸動脈,椎骨動脈に多く見られる
・心原性脳塞栓と同様に突然発症
・内頸動脈,中脳動脈に多い
・側副血行路が形成され症状の出現は緩徐
・心原性脳塞栓と同様に突然発症
心原性脳梗塞
・脳梗塞全体の30%,増加傾向
・非弁膜症性心房細動が約半数
■その他に,急性心筋梗塞,人工弁置換術,リウマチ性心疾患,感染性心内膜炎,心筋症,心臓腫瘍
・心原性脳塞栓は突然発症して短時間で症状が完成する
ラクナ梗塞
・脳梗塞全体の30%,減少傾向
・脳の深部を灌流する穿通枝と呼ばれる細い動脈が閉塞すること
・大脳深部,脳幹,小脳などに小さな梗塞を生じる
・意識障害はない
■高血圧,糖尿病,喫煙,脂質異常症など
その他の梗塞
・脳動脈解離,脳静脈,静脈洞血栓症による静脈還流障害,血管炎,血液凝固異常によるものなどがある
③症候
内頸動脈系の閉塞
・片麻痺,半身の感覚障害,共同偏視
■失語
・障害が非優位半球の場合
■半側空間無視
・失行などの高次機能障害を伴うこともある
・視放線に障害が及ぶと、同名半盲
椎骨脳底動脈系の閉塞
・めまい,悪心・嘔吐,脱力,しびれ,小脳失調
脳幹梗塞
・急激な意識レベルの低下
大脳半球の大部分を巻き込む広範囲の脳梗塞
・著しい血圧上昇や頭蓋内圧亢進
・脳ヘルニアの徴候は発症直後ではなく,梗塞が進行して脳浮腫が強くなる時期にみられる
④現場活動
・血栓溶解療法あるいは血栓回収療法につながる情報収集と評価が重要
■血栓溶解療法(t-PA療法)
■発症後4.5時間以内
・主幹動脈に対する血栓回収療法
■発症後8時間以内
・搬送中の体位
■仰臥位または麻痺側を上にした回復体位
■頭部高位(頭部をやや挙上した体位,セミファウラー位)も考慮
・用手的気道確保の後にも酸素飽和度が低い場合には,酸素投与を考慮
・安静にさせて血圧の再上昇を避ける
・心房細動の有無を心電図モニターで確認
⑤医療機関での診療
・発症数時間以内の超急性期にはMRI診断される
■発症後4.5時間以内
・血栓回収療法適応
■発症後8時間以内
⑥予後
・ラクナ梗塞
■比較的良好
・心原性脳梗塞
■比較的不良
・5年以内の再発が30%にみられる
3 一過性脳虚血発作
①概念
※神経症状を伴わない,一過性の意識消失は一過性脳虚血発作に含まれない
・脳梗塞の前兆として重要
②病態
・多くは動脈硬化が原因
■遊離したアテローム血栓が末梢に塞栓を生じるもので,血栓が短時間で溶解し,血流が再開すれば症状は消失して一過性脳虚血発作となる
■動脈硬化により血管が狭窄している場合,血圧が急激に低下すると局所の脳血流が減少して症状が出現するもの
③症候
・意識障害を伴うことはまれ
④現場活動
4くも膜下出血
①概念
・髄膜は3層
■軟膜,くも膜,硬膜
・脳の表面を走行する血管は,くも膜と軟膜のすき間(くも膜下腔)に存在
②疫学
・50〜60歳で好発
・男女比は1:2で女性に多く
■喫煙,高血圧,大量飲酒
・くも膜下出血は突然死の原因の約7%を占める
③原因
・脳動脈瘤はウイリス動脈輪の分岐部にできやすい
■前交通動脈
■内頸動脈と後交通動脈の分岐部
■中大脳動脈の分岐部
■椎骨動脈や脳底動脈の分岐部
④病態
・脳動脈瘤が破裂して出血を起こすと血液はくも膜下腔に広がり髄膜刺激症候を引き起こすその結果,頭痛や悪心・嘔吐が出現
・脳脊髄液の流れが障害されて急性水頭症を合併すると,頭蓋内圧亢進症候は増悪する
・根治的治療が実施されなければ,2週間以内に約20%で再出血
・再出血例の予後は不良
■不整脈やST-T異常などの心電図変化は約半数にみられる
■心室細動などの致死性不整脈が病院前死亡の原因の一つとなる
⑤症候
■突然発症する強い持続性の頭痛
■悪心・嘔吐を伴う
・「バットで殴られたような」などと表現されることがある
・片麻麻痺や失語などの局所神経症状はみられないことが多い
・重症例では意識障害を伴う
・重症のくも膜下出血では,発症直後に心肺停止や神経原性肺水腫による呼吸困難を起こすことがある
たこつぼ心筋症
・急性心筋梗塞に類似した心電図変化
・心不全をきたす
頭蓋内圧亢進症候
・クッシング徴候
■徐脈,高血圧
・項部硬直
■発症直後にはみられず,数日後に顕著となる
⑥現場活動
・もっとも重要な目標
■再出血の防止
・嘔吐,興奮,疼痛などの刺激による血圧の上昇をできるだけ回避
・脳神経外科の専門的治療が可能な医療機関を選定
・搬送中は傷病者の興奮や不安,精神的動揺を極力避ける
⑦医療機関での診療
・診断は頭部のCTかMRI
■厳重な鎮静・鎮痛
■血圧管理
■また、根本的治療として開頭手術や血管内治療が行われる
・動脈解離や脳動静脈奇形による場合も,再出血を防止するための治療が行われる
⑧予後
・不良なことが多く
・病院前死亡が約20%
・病院到着後に死亡あるいは重度な後遺症を残すものが約30%
・障害なく社会復帰するものが約25%
■良い例→回復することが多い
■悪い例→予後不良
5 脳出血
①疫学
・脳内出血ともいい,脳実質内への血腫形成をさす
・発症危険因子
■加齢,高血圧,喫煙,糖尿病,動脈硬化症
■被殻:約40%
■視床:約30%
■皮質下:約10%
■小脳:約10%
■脳幹:約10%
②原因
・脳出血の大部分は高血圧が原因
■脳内の脳動静脈奇形
■脳腫瘍
■もやもや病
■動脈瘤破裂
・白血病などの血液疾患や肝不全などによる出血傾向も原因となる
高齢者脳アミロイドアンギオパチー
・高血圧性脳出血ついで第2位
・皮質下に出血することが多い
・再発も多い
③部位と症候
・一般的な症候
■頭痛,悪心,嘔吐,運動麻痺
大きな血腫の場合
・意識障害を起こす
・過換気やその他の呼吸異常が出現
・瞳孔不同と対光反射鈍麻
・白血病などの血液疾患や肝不全などによる出血傾向も原因となる
被殻出血
・バビンスキー反射が出現
・対側の顔面神経や舌下神経など脳神経の運動神経麻痺
・顔の歪み,構音障害や舌の偏位
・優位半球の出血
■失語症
・非優位半球の出血
■失行・失認
・血腫が増大
■意識障害
・病変をにらむ方向の共同偏視
視床出血
・感覚障害がより強い
・対側上下肢のしびれや痛みを訴えることが多い
・脳室に穿破して急性水頭症を起こすこともある
・血腫が増大すると間脳や脳幹に障害が及び意識障害をきたす
・交感神経線維が障害
■同側の縮瞳
■眼裂狭小
■ホルネル症候群を認める
皮質下出血
・運動野であれば
■対側の片麻痺
・感覚野であれば
■対側の感覚障害
・痙攣を合併しやすい
・その他
■共同偏視,運動性失語,感覚性失語,同名半盲
小脳出血
・強い悪心・嘔吐
・めまい
・体幹部の動揺
・歩行障害など失調症状
・運動麻痺はない
・水平眼振がみられることが多い
・出血が増大すると直接脳幹を圧迫し,急激に高度な意識障害や呼吸停止に至ることもある
脳幹出血(橋出血)
・血腫が大きい場合
■突然の意識障害
■四肢麻痺
■交感神経の障害による両側の縮瞳
■眼球の正中固定
■呼吸異常
■高体温
・血腫が小さい場合
■対側の片麻痺
■病巣と反対をにらむ方向の共同偏視
④現場活動
・発症時刻や発症状況,あるいは,既往歴,内服薬などの情報が両者の鑑別の手がかりとなる
⑤医療機関での診療
・主にCTで診断
■出血増大の防止を目的に積極的に降圧することが主
・場合により血腫除去など減圧を目的とした手術が行われる
⑥予後
・1年以内に1/4が死亡
・生存例の半数は介護が必要
■片麻痺が残りやすい
■機能予後が問題となる
・橋出血の昏睡例
■予後不良
■意識障害が遷延する例では肺炎などさまざまな合併症が起こる
C 中枢神経系の感染症
1 髄膜炎
①病態・原因
・髄膜(とくにくも膜と軟膜)およびくも膜下腔に炎症が生じた状態
・原因の多くはウイルス,細菌,真菌,結核などによる感染症
・非感染性の原因
■癌や薬剤
ウイルス性髄膜炎
■感冒が先行することが多く
■耳下腺炎合併
細菌性髄膜炎
■中耳炎
■副鼻腔炎
・遠隔部位から血行性に波及する場合ある
・起炎菌
■インフルエンザ菌,髄膜炎菌,肺炎球菌
■亜急性
■脳神経麻痺をきたしやすい
・真菌性髄膜炎
■免疫機能が低下している場合に多い
②症候
症状
・発熱
■発熱などの感冒様症状が先行することもある
■非拍動性で激しい
■時間~日単位で増す
・嘔吐、羞明
・項部硬直などの髄膜刺激症候が観察される
ウイルス性髄膜炎
・予後良好
・対症療法のみで良好な経過をたどることが多い
■意識障害や痙攣を起こす
細菌性髄膜炎
・重症で進行も速い
・意識障害、痙攣など起こす
・頭蓋内圧亢進症候などが急激に出現
③対応
・細菌性髄膜炎は生命にかかわる重症疾患
2 脳炎・脳症
①概念・原因
脳炎
・脳炎は脳実質の炎症性疾患の総称
■単純ヘルペス→頻度が高い,重症,予後不良例は半数
■日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹,ムンプスなど
・その他の感染性脳炎の原因
■細菌性,結核性,真菌性,原虫性などがある
脳症
・脳炎と同様の症状がみられるが,脳実質に炎症がない場合を脳症
・病態は感染症ではなく脳浮腫が主体
②症候
脳炎
・発熱,頭痛,悪心・嘔吐,髄膜刺激症候,意識障害,痙攣,運動麻痺,失語,精神症状(幻覚,異常行動)など
脳症
・原因疾患に応じた症候に加え,脳炎と同様の症候
③対応
・痙攣の出現を想定し,気道確保や誤嚥の予防を心がけて搬送
・集中治療が可能な高次救急医療機関に搬送
D 末梢神経疾患
・末梢神経障害を総称して,ニューロパチーと呼ぶ
・末梢神経には運動神経,感覚神経,自律神経が混在
1 ギラン・バレー症候群
①概念・原因
・急性の多発神経炎
■髄鞘が障害される脱髄型
■軸索そのものが障害される軸索型→障害を残しやすい
■両者の混合型
②症候
・先行する感冒様症状または胃腸炎の1~3週後に発症
・日~週単位で進行する末梢運動神経障害が主
■両側性の下肢筋力低下からはじまり
■体幹から上肢へと弛緩性麻痺が左右対称性に上行していく
・四肢の麻痺は遠位筋でより強く現れる
・重症例では呼吸筋麻痺も生じて,人工呼吸管理が必要になる
・意識は障害されない
・脳神経症状を伴うこともある
■眼球運動障害,顔面麻痺,構音障害,嚥下障害
③対応
・自律神経障害により体位変換で急激に血圧が変動して失神発作を起こすことがあるので注意
・神経内科など専門医の診療が可能な医療機関に搬送
2 糖尿病性ニューロパチー
・内因性の末梢神経障害(ニューロパチー)の原因として糖尿病がもっとも多い
・糖代謝の異常や微小血管障害による虚血などにより,末梢神経が障害され発症
・左右対称性の四肢末梢のしびれや感覚鈍麻
・自律神経の障害などを生じる
■無痛性心筋梗塞
■神経因性膀胱
■糖尿病性潰瘍
・運動障害は少ない
E その他の中枢神経疾患
1 てんかん
①概念
・異常なニューロンの活動によって一過性に起こる徴候または症状
・痙攣とてんかんは同義ではなく,痙攣のないてんかん発作もある
・痙攣があっても急性で反復しないものはてんかんとはいえない
②てんかん分類と症候
焦点起始発作
■意識障害を伴わないもの→焦点意識保持発作
■意識障害を伴うもの→焦点意識減損発作
■脱力発作、間代発作,強直発作
■自動症発作
→舌打ち・舌なめずり,唇を噛む,つばを飲み込む,顔をなで回す,目的もなく戸を開けたり叩いたりする,家の中を歩き回るなどの動作を繰り返す
■知覚発作→身体の一部の異常知覚
■自律神経発作→心窩部不快感,悪心,頭痛,腹痛
■情動発作→恐怖・不安,既視感(デジャヴュ)
■未視感→ジャメヴュ
・焦点起始両側強直間代発作
■特殊な発作型で、伝播形式を表したもの
全般起始発作
■全般運動発作
→強直間代発作,間代発作,強直発作,ミオクロニー発作,脱力発作
■ミオクロニー発作
→急に両上下肢や顔面の筋肉が短時間収縮する発作
■脱力発作
→急に全身の筋肉に脱力が生じて転倒する発作
■全般非運動発作(欠神発作)
→定型欠神発作,ミオクロニー欠神発作
■欠神発作
→10秒以下の持続時間で急に意識を失い行動を停止する発作
起始不明発作
・発作が身体の一部からはじまったのか,全身ではじまったのか観察できなかった場合
③病因
構造的病因
・神経画像検査で異常があり,それが発作の原因の可能性が高いと推測される場合のこと
■脳卒中,外傷,感染
・遺伝的なもの
■大脳皮質形成異常
素因性病因
・遺伝子異常が直接のてんかんの原因となる場合のこと
・ほとんどの原因遺伝子がいまだ明らかになっていない
感染性病因
・感染の結果として、てんかんを発症する場合のこと
・神経囊虫症や結核,HIV,マラリア,トキソプラズマ,サイトメガロウイルス先天性感染など
代謝性病因
・代謝異常症が直接てんかんの原因となる場合のこと
・ポルフィリン症や尿毒症,アミノ酸代謝異常症
免疫性病因
・免疫性疾患が直接てんかんの原因になるもの
・自己免疫が関与していると考えられる
④対応
・すでにてんかんの診断で医療機関に通院中であり,かつ症状が完全に消失している場合
■かかりつけ医療機関に搬送
■神経内科や脳外科などの専門施設
2 脳腫瘍
・硬膜内に発生する腫瘍の総称
・頻度が高い順
■神経膠腫→髄膜腫→下垂体腺腫→神経鞘腫→頭蓋咽頭腫
■目覚め型頭痛→目覚めたときにもっとも強い
■嘔吐,うっ血乳頭,痙攣
・痙攣,腫瘍出血などを合併すると急激に意識レベルが低下し,救急搬送の対象となる
3 変性疾患
・神経組織に変性をきたす一群の慢性進行性疾患
・原因は不明のため有効な治療法を欠くものが多い
①脊髄小脳変性症
■失調性歩行
■四肢協調運動障害
■構音障害
■不随意運動
②筋萎縮側索硬化症(ALS)
■球麻痺症状(舌の運動障害,嚥下障害,構音障害)
■上肢の小手筋の萎縮で発症
・上位・下位の運動神経症状が全身に及ぶと,全身の筋力低下,筋萎縮,呼吸筋麻痺をきたす
・感覚障害,眼球運動障害,直腸膀胱障害,小脳症状,認知機能の低下はみられない
③パーキンソン病
・主に50歳以降に発症する頻度の高い疾患
・神経伝達物質であるドパミンの産生が低下が関与
■仮面様顔貌
■前傾前屈姿勢
■小きざみ歩行
■動作緩慢
■歯車様固縮
■安静時振戦などの錐体外路症状
■便秘
■起立性低血圧など
・知能は保たれる
■薬剤,中毒,血管障害,脳炎などが原因でパーキンソン病と同様の症状を呈したもの
■抗精神病薬の副作用によるものが多い
④アルツハイマー病
・概ね65歳以上(若年にもみられる)の人に最初は物忘れにはじまり,病的な認知機能障害(記憶,見当識,視空間認識,計算,遂行機能など)が起こるもので
・症状は徐々に進行する
■せん妄,徘徊,作話,興奮,その他の異常行動を伴う
・最終的には廃用症候群から高度の荒廃状態に至る
・画像検査(MRI検査など)で大脳の萎縮,とくに海馬と呼ばれる側頭葉部分の萎縮が特徴的とされている