A 侵襲への反応
1 循環動態
・代償:循環不全に伴う全身的な酸素供給能力の低下に対して,生体は主に交感神経系と内分泌系を介して循環機能の維持を図る
・ショックに対する代償反応:①心機能の亢進,②心臓の前負荷増加,③血流の再分配に分けられる
①心機能の亢進
・ショックでは心拍数の増加や心収縮力の増加によって心臓のポンプ機能を高めようとする変化が起こる
・交感神経による心臓への直接作用のほかに副腎髄質からのカテコラミン分泌を促進するという交感神経の間接的作用による
・ショック傷病者に認められる頻脈は代償の現れ
②心臓の前負荷増加
・心臓の前負荷は1回拍出量を規定するもっとも重要な要素
・ショックでは交感神経系および内分泌系のメカニズムを通じて前負荷を高めようとする反応が起こる
・交感神経による静脈(容量血管)の収縮は,静脈に貯留した血液を中心循環(心臓の近く)に移動させることによって心臓の前負荷を増加
・水分およびナトリウムの再吸収を促進して,尿中への体液の喪失を最小限に抑える
■抗利尿ホルモン(バソプレシン:ADH)
■レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系
これらのホルモンなどが循環血液量前負荷を増加させることにつながる
■抗利尿ホルモン(バソプレシン:ADH)
■レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系
これらのホルモンなどが循環血液量前負荷を増加させることにつながる
・出血により血管内容量が減少すると
■組織間液が血管内に移動して循環血液量を回復させる機序が働く
■この代償機転は比較的緩徐である
■出血後に時間経過とともにヘマトクリット値が低下し,貧血が進行するのはこのためである
■組織間液が血管内に移動して循環血液量を回復させる機序が働く
■この代償機転は比較的緩徐である
■出血後に時間経過とともにヘマトクリット値が低下し,貧血が進行するのはこのためである
・前負荷を増加させようとする特殊な代償反応
■頻呼吸
■強い吸気努力の際に発生する胸腔内の陰圧は末梢の血液を中心循環に移動させて前負荷を増加させる
■このため,不用意な陽圧呼吸が前負荷や心拍出量を減少させることに注意が必要
■頻呼吸
■強い吸気努力の際に発生する胸腔内の陰圧は末梢の血液を中心循環に移動させて前負荷を増加させる
■このため,不用意な陽圧呼吸が前負荷や心拍出量を減少させることに注意が必要
③血流の再分配
・交感神経の緊張によってもたらされる細動脈(抵抗血管)の収縮は生命維持に必須ではない臓器,皮膚,脂肪組織,腹部臓器などにおいて強く起こる
・冠動脈や脳動脈での反応は弱いため,拍出された血流が心臓や脳に重点的に分配されることになる
・ショックの際にみられる皮膚の蒼白・冷感はこのような代償に伴って皮膚血流が著しく減少していることの現れである