A 小児の外傷
1 特徴
①頭部
・小児は相対的に頭が大きく,重心が「高い」ため交通事故や転倒・転落に際して頭部を打撲しやすい
・頭蓋骨に弾性があり,陥没骨折が起こりやすい
■ピンポンボール骨折
■ピンポンボール骨折
・後頭部が突出しているために,仰臥位では頭部が前屈しやすく,気道確保の妨げになる
②気道
・口腔内に占める舌の相対的体積が成人に比べて大きいため,舌根沈下による気道閉塞を起こしやすい
・気管の径が小さいので,気道内の血液や喀痰,気道粘膜の浮腫を起こしやす
・乳児は鼻呼吸が主体
■血液や粘膜浮腫などによる鼻腔の狭窄が換気障害につながりやすい
■血液や粘膜浮腫などによる鼻腔の狭窄が換気障害につながりやすい
③胸部
・小児の肋骨は成人に比べて柔軟性が高い
・胸壁への外力によって心臓振盪や肺挫傷,肝損傷など,胸部や胸郭内腹部の臓器が損傷を受けやすい反面,肋骨骨折は少なく,胸壁の損傷も目立ちにくい
④腹部
・小児は肝臓や脾臓が相対的に大きい
・肋骨や横隔膜を側面からみた場合の走行方向が水平に近い。このため肝臓のうち胸郭によって保護されない部分が大きく,外力を受けやすい
⑤四肢
・10歳未満の小児は骨化が未熟で骨組織が弾力性に富むため,若木骨折がみられる
・骨に比べて靱帯の強度が相対的に高いため,成人に比較して脱臼が少ない
・関節周囲の剝離骨折や,強度の低い骨端軟骨の障害をきたしやすい
・骨端軟骨の障害に対して適切な治療が行われない場合には骨の成長障害を生じる
⑥出血
・出血に対し,小児は主に末梢血管抵抗と心拍数を上げて対応する
・末梢血管抵抗の上昇は強力で,出血量が循環血液量の20%近くに達するまで血圧の低下は目立たない
■すなわち,血圧はショックを判断する指標とはならない
■すなわち,血圧はショックを判断する指標とはならない
・心拍出量を維持する能力は比較的低い
■血圧が正常の場合でも組織の血液灌流は出血の初期から低下する
■心拍数の増加は出血の初期から認められる
■血圧が正常の場合でも組織の血液灌流は出血の初期から低下する
■心拍数の増加は出血の初期から認められる
2 主な外傷
①頭部外傷