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在宅療法継続中の傷病者の処置  P429

在宅療法継続中の傷病者の処置
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A 在宅医療(療養)とは

在宅療養
■住まいにおいて、医療や介護を受けながら療養生活を送ること

B 在宅療法への対応

・在宅医療を受けている傷病者への対応
■日ごろから傷病者をケアしている
■訪問看護師
■ホームヘルパー
■などからよく状況を聴取し,
必要に応じて処置などについても協力を求める

1 呼吸補助療法

①在宅酸素療法(HOT)

適応
慢性呼吸不全で比較的病状の安定している患者

原因疾患
慢性閉塞性肺疾患(COPD),肺結核後遺症
小児
神経筋疾患が多い

酸素供給装置

持続的にあるいは間欠的酸素が供給

不具合が生じた場合
担当業者が対応


観察の注意点

在宅酸素療法の患者
■低流量の酸素によって
SpO2値90%程度にコントロールされていることが多い


対処法

日常定められている酸素流量で酸素投与を開始する

・チアノーゼや呼吸停止の場合
■BVMを用いて人工呼吸開始
■必要に応じて吸引

バイタルサインが安定している場合
SPO2値90%維持できる量の酸素を投与する


②在宅人工呼吸療法

在宅人工呼吸療法

在宅人工呼吸療法が行われる基礎疾患
筋萎縮性側索硬化署,筋ジストロフィーなどの神経疾患,慢性閉塞性肺疾患(COPD),肺結核後遺症など

・短時間であれば内蔵または外部バッテリーからの電力供給可能

スイッチやモニター画面が少なくコンパクトで,シンプルな構造

・呼吸には大きく分けて,気管切開カニューレ(気管カニューレ)を介して行われる気管切開下陽圧換気(TPPV)と,マスクを使用する非侵襲的陽圧換気(NPPV)がある

長期にわたり気管切開による気道確保の必要とする患者
■脳血管障害や頭部外傷に伴う脳障害により,
重度の意識障害が遷延し,痰の喀かくが自力でできない場合

■咽頭や喉頭の腫瘍で上気道が閉塞しているかその危険がある場合
■肺障害・上位頸髄損傷・神経筋疾患・呼吸中枢などの障害で人工呼吸器を用いた呼吸補助が常時または長期間必要な場合

観察の注意点

人工呼吸器の換気モードが自発呼吸をサポートするものか,完全な強制換気かを直ちに確認することは器械の操作に慣れないと難しい

気管カニューレには
プラスチック製でカフのあるもの
金属製などでカフのないものなどがある

永久気管瘻の場合
カニューレを必要とせず加湿用のガーゼが入口部にかぶさっている


対処法

カフ付き気管切開チューブが挿入されている場合
接続部に直接BVMを接続

・気管カニューレが挿入されている場合
管理および交換については家族のほうが慣れているため
協力を得ながら気道の確保,酸素投与,吸引,体位管理などを行う

・永久気管瘻やカフなし気管カニューレを挿入された傷病者に補助換気が必要な場合
乳児用円形マスクを前頸部に密着させ換気

2 栄養補助療法

①在宅中心静脈療養法

在宅中心静脈栄養療法

長期にわたって食物を口から食べられず消化管からの栄養の吸収ができない場合
■毎日必要なカロリー(糖分・アミノ酸・脂肪など)と水分,電解質,微量元素やビタミン類を経静脈的に投与する必要がある

適応患者
小腸の大量切除を施行され永続的に栄養の吸収が不可能な場合
炎症性腸疾患などで腸管を一定期間休める必要がある場合など

経静脈栄養剤高浸透圧のため,
血管壁が傷まないように太り静脈などから,
内径が太く血流の豊富な静脈内に留置されたカテーテルを介して投与されている


観察の注意点

血管内にカテーテルを長期留置することで生じるトラブル
カテーテル感染閉塞,事故抜去,カテーテル切断など主

・感染時にはカテーテル刺入部の
発赤,熱感,悪感,発熱などが生じる

・輸液バッグが心臓より低い位置にあるとき,
カテーテル内に血液が逆流することがある


対処法

・カテーテルが閉塞している場合
そのまま搬送

偶発的に抜けてしまった場合
■出血や感染の危険があるため,清潔なガーゼで刺入部をしっかりと圧迫する

・かかりつけ医へ搬送することが原則

抜去されたカテーテルは必ず医療機関に持参

回路内に多量の空気が認められたりカテーテルが切断されている場合
空気塞栓をきたす可能性がある
直ちにカテーテルクランプする

カテーテル内に血液が逆流している場合
■輸液バッグを心臓より高い位置にする


②成分栄養経管栄養法

長期にわたって経口的に食事を自力で摂取できない場合に,
チューブを使って直接消化管(胃または小腸)人工栄養剤・水分などを投与すること

方法
経鼻胃管
チューブを胃や小腸内へ直接留置する方法

適応患者
脳血管障害頭部外傷意識障害が遷延し食事を自力摂取できない場合
脳梗塞後遺症パーキンソン病などさまざまな原因で嚥下障害を生じ,
経口的な摂取では誤嚥・窒息の危険がある場合

観察の注意点

・チューブの交換
■通常訪問看護師などが行っている


対処法

・チューブトラブルよりも原疾患に伴う合併症で救急要請される場合が多い

肺炎や尿路感染症に伴う発熱,脱水,下血による貧血,嘔吐による誤嚥・窒息など

・もっとも危険な合併症
■誤って気管内に留置されたチューブから栄養剤が投与された場合
嘔吐による誤嚥・窒息が生じる場合がある

・経管栄養剤が気管内に投与されると重症肺炎が発生

大量に肺に入れば心肺停止に陥る場合もあり得る

3 排泄補助療法

①在宅自己導尿尿法・持続導尿

脳血管障害を含む長期意識障害,脊髄損傷,骨盤内腫瘍術後など,
尿意を感じたり,随意的に排尿することができなくなっている患者


観察の注意点

・起こり得るトラブル
カテーテルの抜去,閉塞,乏尿,血尿,尿混濁など
発熱脱水など全身症状を伴う場合もある

対処法

・テキストP433参照


②人工肛門

直腸癌の切除手術後など切除部口側の腸管を腹部(左側が多い)の皮膚上に出して固定したもの

・本来の肛門と異なり括約筋はないため,
便とガスはパウチの中に断続的に排泄される


観察の注意点

・局所の観察は,透明のパウチを通して行う

・排便によって周囲の汚染をきたさないよう,
搬送時にはパウチをしっかり再装着しておく

パウチの脱着本人・家族に行ってもらうほうがよい


対処法

・テキストP433参照

4 在宅注射療法

①在宅注射療法とは

在宅自己注射は保険給付の対象

・近年とくに増加している糖尿病患者に対して(1型糖尿病は絶対適応),インスリン注射が行われている

・がん末期患者が自宅で最期の時間を過ごすために,がん性疼痛に対する鎮痛薬や麻薬の使用も行われている


②観察の注意点

インスリン注射で効果が予想以上に発現した場合低血糖を発症することがある。その際は,血糖測定を行い、必要に応じてブドウ糖投与

・鎮痛薬や麻薬の使用
便秘,嘔気・嘔吐,眠気,混乱・せん妄,呼吸抑制,口喝,排尿障害などを生じることがある

③対処法

・インスリン注射による低血糖症では,
血糖測定を行い,必要に応じてブドウ糖溶液の投与の指示を受ける

・家族による血糖測定を利用してもよい

・鎮痛薬による呼吸抑制をきたした場合
■酸素投与や状況によって補助換気を行う

5 補助腎臓療法

①在宅人工透析療法(血液透析)

腎機能が低下し腎不全にまで至った場合に,一般的に病院診療所で血液透析治療が行われる

・近年では自宅に透析装置を設置し,患者自身(家族などの介助)による在宅人工透析療法がある

・ライフスタイルに合わせた透析治療が可能


観察の注意点

慢性腎不全患者
■前腕の皮下などに動脈と静脈をつないだ血液透析用内シャント(内シャント)が造設されている
■体内の余分な水分老廃物除去し,再度体内へ戻す
■シャントが正常な状態ならば,拡張して蛇行している静脈内に拍動する血流を皮膚の上から触れることができる

・内シャントの位置を確認して血液の拍動が感じられない場合
■閉塞の可能性が考えられ,再手術による再建が必要になる

・低血圧(何らかのショック)が原因でシャント内の血流が低下している場合
■早期の治療によりシャント閉塞を回避できる可能性がある


対処法

駆血帯など
■シャント側上腕に巻かない

・シャント部からの出血
圧迫止血で対応

慢性腎不全が悪化
うっ血性心不全,肺水腫,高カリウム血症による重症不整脈などが起こる可能性がある


②在宅人工透析療法(腹膜透析)

腹膜透析

腹膜を利用した透析
1日数回,場合によっては24時間行うことで,一定の透析効率を得ることが可能
夜間睡眠中だけ機器を用いて連続して行い,昼間は行わない方法もある
・患者にとって負担少なくい
・移動に制限がある人や在宅での仕事・主婦業が中心の人にとっては,社会生活の制限が比較的軽い方法
血液透析と腹膜透析の主な違い

出典:へるす出版 改訂第10版救急救命士標準テキスト

観察の注意点

腹膜炎の有無を確認


対処法

・チューブが抜けた場合
刺入部に清潔ガーゼを当てて搬送

かかりつけ医に搬送するのを原則

慢性腎不全の悪化,肺うっ血,高カリウム血症などを見逃さないようにすることも重要

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