A 緊急度と重症度の概念
1 緊急度と重症度の概念
重症度
・病態が予後に影響を与える程度
■時間の因子は関与しない
緊急度
・時間経過が予後に影響を与える程度
・緊急度が高い
■予後が悪くなるまでの時間が短い
■窒息や心停止の重症化を防ぐための「時間的余裕・持ち時間」
分単位
■重症外傷,脳卒中
時間の単位
■例:母趾の切断指
→生命予後の観点からは重症度が低い
→再接着術の可否の観点からは緊急度が高い
2 判断の目的
■現場活動や搬送中の適切な処置の実施,搬送先医療機関選定の点で重要
・現場トリアージ
■的確な緊急度・重症度に基づく適切な医療機関選定
第一:メディカルコントロールに基づく精度の高い現場トリアージ方法
第二:医療機関受け入れ体制の整備
第三:医療機関における重症度の定義の明確化
第四:オーバートリアージ率とアンダートリアージ率の目標値の設定
オーバートリアージ
・緊急度・重症度を過大評価した結果,低次救急医療機関に搬送すべき傷病者を高次救急医療機関に搬送すること
・病院の限られた人的資源,医療物質の有効活用を妨げる可能性がある
アンダートリアージ
・過小評価した結果,高次救急医療機関に搬送すべき傷病者を低次救急医療機関に搬送すること
・傷病者の短期機能予後やICU滞在時間・入院期間に悪影響を及ぼす可能性がある
・現場トリアージ実施はアンダートリアージの回避に重点を置く
B 判断の基準
1 緊急度・重症度の分類
①重症度の分類
・重症度の分類(5つ)
■軽症,中等症,重症,重篤,死亡
重症度分類
出典:へるす出版 改訂第10版 救急救命士標準テキスト
②緊急度の分類
・緊急度の分類(4つ)
■緊急・赤,準緊急・黄,低緊急・緑,非緊急・白
緊急度とその定義
出典:へるす出版 改訂第10版 救急救命士標準テキスト
2 緊急度・重症度判断の基準
・緊急度・重症度は,総合的に判断する
■生理学的評価,解剖学的評価,その他症状などによる異常(外傷の場合には受傷機転なども含む),傷病者属性の順に評価していく方法が推奨されている
①生理学的評価
■意識,呼吸,脈拍,血圧,SpO2値,ショック症状の有無の6つの項目を指標として位置づけている
・ひとつでも重症以上であると判断し,救命救急センター等の三次救急医療機関,あるいはこれに準じる二次救急医療機関及び地域の基幹病院を選定する必要があるとされている
意識レベル
■JCS100以上
呼吸
■30/分以上の頻呼吸、10/未満の呼吸数減少
・重症
■SpO290%未満
脈拍
■120/分以上、50/分未満
血圧
■収縮期血圧90mmHg未満、収縮期血圧200mmHg以上
皮膚所見
■したがって,血圧だけを頼りにせず,皮膚所見と頻脈から,ショック状態であることを早期に認知する必要
②解剖学的評価およびその他症状などの評価
・緊急度・重症度に影響を与える
■数値化された的確な指標はない
■解剖学的所見と受傷機転,年齢(小児または高齢者),透析患者,薬物中毒,心疾患,呼吸器疾患の既往,悪性腫瘍,病的肥満,糖尿病(とくにインスリン使用中),出血性疾患(紫斑病,血友病など),妊婦,肝硬変,抗凝固薬服用中など
③アンダートリアージとオーバートリアージ
■高齢者,多発外傷でない重症単独外傷
・オーバートリアージされやすい
■薬物服用,肥満,頭部外傷,顔面外傷,四肢外傷
■生理学的パラメータ異常(バイタルサインの異常)や明確な身体所見の異常を認める傷病者
・オーバートリアージ、アンダートリアージ多い症例
■麻痺を認めない意識障害,腹痛,悪心・嘔吐などの傷病者
・とくに多くのオーバートリアージ
■不定愁訴の傷病者
・現場トリアージの原則
■アンダートリアージ率を低く抑えることにあり,そのためオーバートリアージ率は高くなりがち